INTERVIEW
ikuru
異業種ならではのこだわりで作り上げた
人を結ぶサードプレイス
―スタイルのある店に、人は集う
高知出身の店長、永柳慎介さんがおだやかに迎えてくれる「ikuru」。永柳さんが北参道で焼き鳥スタンドを営んでいたときに常連だったのがアパレル会社DADDY&SONの堀内章平さんと中野晃一さんで、2人をオーナーにikuruが誕生した。仕事帰りに気軽に立ち寄れる、サードプレイスになるお店がなかなか見つからない。だったら自分たちでやろう、と会社内に飲食部を立ち上げ、飲食業界での挑戦を決めたのだという。「3人でいくつもの店舗を視察しました」と永柳さん。自分がやりたいことも伝えながら、ikuruのスタイルができあがっていった。テーブルにはアパレルの什器を用い、のれんはデニム生地に。Tシャツやエプロン、グラスといったグッズも販売するなど、ファッション業界の視点ならではのアクセントを、随所に見ることができる。
「ikuru」の由来は、“行く来る”の造語。この場所を起点に人との出会いや友情が生まれることを願って名付けられた。赤ずきんちゃんへのアイロニーのような、シュールでポップなロゴも印象的だ。女の子がオオカミの頭に噛みついているビジュアルには、「若い女性でも臆せず、気楽に入って来て欲しい」という思いが込められている。
―日本酒にピッタリなおつまみが充実
高知出身で、高校卒業後に東京に来て以来、20年以上にわたってバーテンダーからビストロ、居酒屋まで、さまざまな業態で飲食の経験を積んできた永柳さん。「自分も飲むのが好きなので、おつまみメニューが多いかもしれません」と話す。高知を意識したものも多い。漁港で燻され、直送されるカツオのたたきはもちろん、ウツボのたたきは白身のプリっとした食感がたまらない。高知では結婚式やお祝いの席で皿鉢料理(さわちりょうり)(大皿料理)に必ず登場するという。また特産品のピーマンは、千切りにして、ごま油と塩こんぶをのせシンプルに提供、箸休めのサラダに最適だ。土佐文旦(柑橘の一種)の甘いシロップには、焼酎を合わせてサワーで用意する。
カウンターの中でひときわ目を引くのが巨大な蒸し器。プリプリほぼ海老 エビシュウマイ(3個)やジューシー塩麹マリネの蒸し鶏など、蒸すことで旨みを“マシマシ”にする蒸し料理も外せない。


魅力的なメニューがたくさんなので、迷ったときには店主おまかせのおばんざいとおつまみ(3種盛りか5種盛り)からスタートしよう。ナスの揚げ浸しや切り干し大根といったおばんざいに、おつまみの燻製を入れたりと、そのときのおすすめを永柳さんがみつくろってくれる。「お好みを伝えてもらっても構いません」。
燻製おまかせ3種盛りもいいが、柿ピーの燻製もぜひ試してほしい。「燻製にしたらおいしいからやってみなって、お客さんに教えてもらいました」。
数種類のカレーが並ぶランチも必食。ディナーの締めでも人気の豚ひき肉の和風ドライカレーは、出汁、味噌、生姜が入ったマイルドでやさしい味だ。
―心地よい空気感に包まれて
日本酒は高知のものも含め、50本ほどを揃える。「お客さんとの会話から、入れるお酒を決めることもあります」。前の店の常連さんも、変わらずに訪れる。その人たちが紹介してくれて、輪が広がっているのだそう。
永柳さんの話を聞いていると、オーナーも望んだように、人とのつながりでこの店ができあがってきたことを実感する。一階の真ん中の場所で、他の店をもつなぐ役割を担いながら、同じときに、同じ場所にいる人たちを心地よく満たしてくれる、くつろぎの空間だ。
