INTERVIEW
黒豚・地鶏ダイニング SATSUMA
鹿児島をこよなく愛する店主の想いを
産地直送の素材で味わう
―黒豚とんかつと黒豚しゃぶしゃぶのこと
鹿児島出身の店長 吉田周平さんが営む「黒豚・地鶏ダイニング SATSUMA」は、鹿児島愛に尽きる。「食材が本当においしいと思っています。だからずっと、鹿児島料理のお店をやりたかった」。
特筆すべきはやはり、黒豚について。黒豚は、鹿児島県南東部・大隅半島の中央部に位置する鹿屋(かのや)の南州農場から届く。1976年の事業開始時には、わずか20頭からスタートしたという南州黒豚。今も桜島を望む原野のような場所で、のびのびと走り回りながら、元気に育っている。アミノ酸の含有量が多いために旨味が濃く、筋繊維が細かいために歯切れがよく、食感は程よくやわらかい。また、飼料にさつまいもを10〜20%加えることで、脂はくどくつかず、スッキリとした味わいになる。南州農場では生産から処理まで一貫して行なっているため「屠殺も見に行きました。ありがたさが分かるように」と吉田店長。食材がどうやって届くのかも含めて伝えていきたいと話す。
最高の黒豚を最高の状態で食べてもらうために、150gの黒豚ロースかつは、サクサクの衣に自然の旨味をしっかりと閉じ込める。黒豚しゃぶしゃぶは、バラとロースを用意。単品でも、ハーフ & ハーフでも選べる。また、温泉水で“しゃぶしゃぶ”する点も興味深い。鹿児島県北部・薩摩川内の市比野(いちひの)温泉「お地蔵温泉」のアルカリ水「薩摩の奇蹟」は美人湯とも言われ、天然シリカを豊富に含んでいる。硬度0.6という超軟水でかつ、1リットルに74mgものシリカを含む天然水は、非常に珍しいという。「美容と健康にとてもいいんです」と吉田店長が教えてくれた。


―鹿児島の郷土料理と焼酎
黒豚はスペアリブやハラミ、ウィンナーなども揃うので、気分に応じて選べる。またそれ以外にも、外せない鹿児島料理を紹介したい。まずは、軽く炙ってタタキ風に仕上げた「さつま赤鶏 炙りとり刺し」から。さつま赤鶏は、鹿児島県最北端の出水産。こちらも黒豚同様、農場から直送で届く。「旨味が半端ない。脂のノリがよくて、プリプリという感じの弾力があります」と吉田さんは絶賛する。赤鶏も手羽先やもも焼き、ハツの炙りなど、さまざまに味わえる。
家庭料理のさつま揚げや、丸ごと骨まで食べられるキビナゴの唐揚げや塩焼きは、いずれもホッとする味で、焼酎とぴったりのおつまみになる。
焼酎は、温泉水「薩摩の奇蹟」で割って提供。もちろん鹿児島産にこだわる。「ほとんどが芋焼酎ですが、黒糖焼酎もあります」。カウンターに設置された甕は「前割り焼酎」で、事前に温泉水と5:5で入れて寝かせておくことで、まろやかで飲みやすくなるそう。
―鹿児島の食文化を発信したい
とんかつやしゃぶしゃぶなど、ボリュームのあるメニューに尻込みする必要はない。しゃぶしゃぶは80gから食べれるし、「しゃぶしゃぶを食べて、焼酎を一杯飲んで、他のお店へはしごしてもらうのも全然OKです」と吉田店長は言ってくれる。さつま揚げやキビナゴをつまみに、せんべろも楽しめる。黒豚ロースかつ定食や、黒豚しゃぶ鍋定食など、ランチも捨てがたい。
「鹿児島の食は、甘い文化。砂糖をふんだんに使いますし、ふんだんに使うことが美学とされます」。九州の醤油は甘いと言われるが、鹿児島はさらに甘いという。ここではあえて、鹿児島の味をそのままに表現。スペアリブも鹿児島の醤油で煮込み、しゃぶしゃぶのつけだれになる自家製のポン酢も、しっかりと甘い。
「カルチャーの違いを、ちゃんと伝えたいんです。そこに鹿児島の魅力があると思うから」。
